私は故藤沢周平氏の時代物の小説が大好きです。
私が藤沢周平氏を知るきっかけとなったのは、
「腕におぼえあり」。
ここの事務所に所属していらっしゃる、
ある俳優の方が主演を務められた作品です。
カッコいい。
私もああいうナイス・ミドルなおじさまになりたい。
ドラマを見てから藤沢周平氏の書かれた小説を読み。
部分的に疑問を覚える箇所は有るのですが。
その俳優さんは、主人公の個性を実に、実に的確に、
演じていらっしゃったと、今なお思います。
ただ、殺陣については疑問が。
恐らく藤沢周平氏は、剣術について相当の造詣をお持ちだったのだと考えています。
ですから、件のドラマでは、なんだか妖術めいた描写が散見されるのですが。
小説には、そんな妖術めいた描写は皆無、と言っても過言ではありません。
ですがそれを差っ引いても、「腕におぼえあり」は面白かった。
更に、同じ方が主演を務められた「柳生十兵衛七番勝負」。
これまた、テレビにかじりつく勢いで毎週見たものです。
が。
ある映画監督さんが同じ藤沢周平氏の小説を映像化していらっしゃり、
それも見たのですが。
結論を一言で。
酷い、原作とは似て非なるもの。
例として一つ。
二作目にあたる「鬼の爪」を挙げます。
原作では最後、武士の地位である主人公が、
地位の異なる、農家の女性を妻として娶る、という決心を語ります。
武士としての身分を保ったまま、です。
が。
件の作品では。
主人公は、経緯が有るとは言え武士である事に嫌気がさし、
武士の身分を捨てて、その女性と契りを結ぶ事になってしまっているのです。
改変甚だしい。
武士の身分である者が農家の身分である者を、
身分の差を超えて、妻として娶る。
その結末にこそ、意味が有るのです。
それを改変してしまっては、(私が考える)「鬼の爪」の本質が無くなってしまう。
藤沢周平氏の作品を映像化するにあたり、
殺陣は避けて通る事は難しい。
しかし、チャンチャンバラバラが藤沢周平氏の作品の本質ではないのです。
少なくとも私はそう考えています。
本質は何か。
その本質を見抜く事なく映像化された作品。
それは、元とは似て非なるものです。
コメント
いいね・コメント投稿・クリップはログインが必要です。
ログインする
不適切なコメントを通報する