「墨東綺譚」(永井荷風)&「はつ恋」(ツルゲーネフ)

二冊とも150ページほどの短めの作品です。

永井荷風の方の作品は「ぼくとうきたん」と読み、「ぼく」の字は墨ではなくさんずいに墨のような字なのですがどうやって読むか分からないので出し方が分かりません。
永井荷風はゾラをはじめとするフランス文学に心酔し大いに影響を受けた美しいというのか、流れるようなというか、真似のできない独特の素晴らしい才気あふれる文体を持つ作家です。(二作しか読んだことがありませんが。この作品と「ふらんす日記」です。ふらんす日記がまた独特の芸術的な文章で当時の僕は夢中になり感心しました)気ままで自由な作風の荷風を、世間は世相の変化にともないもてはやしたり落ち目だとみなしたりしました。晩年は朝日新聞に連載されたこの「墨東綺譚」や戦時中発行されなかった作品などが続々と出て再び評価され、最終的に文化勲章を受賞しています。
裸の踊り子たちを携え笑っている写真があるように非常に女性に対しても何事に対しても奔放で、僕はおじいさんになった時のしわくちゃの冴えない顔の写真のイメージが強かったですが、若い頃の写真を見るとなかなかどうして雰囲気があって端正な面があって驚きました。この墨東綺譚もふらんす日記も男性から見た女性の美しさがテーマの場合が多く、美しく、形式と洒落た感覚を共に一流のレベルで兼ね備えた表現で女性を描きますが、ここで荷風の容姿と結びつけて論じたり考えたりするのは野暮で意味がないと今気付きました。
この作品は、家で愛のない妻と家族のために20年間働いてきた小説を書いている60近い男が、傘を貸してやった26の女性と金銭で一晩の契約を結び、通うようになるうち彼女が結婚したいというのだが男は今結婚したら女性は変わってしまい美しさがなくなるので彼女と別れる、というストーリーです。この本並びに、もしかしたら始めには「ふらんす日記」もぜひ読んでみて下さい。他に荷風には「あめりか日記」他多数の佳作があるようで近いうちに読みたいと思います。彼の流麗な文章は歴代日本文豪、個人的には「文章の神様」志賀直哉と比べても恥ずかしくない種類のものを持っていると思います。


ツルゲーネフの「はつ恋」は、文字通り16歳のロシアの青年の初恋を描いたもの。彼女はたくさんの男を誘惑しますが、主人公の事は特別だと言い、忘れられないキスなどをします。しかしある晩、主人公の父が夜中彼女の家へ向かうのを見てしまいます。
青春を考える作品です。

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元気ですか皆さん
excellent