贋金つくり(アンドレ・ジッド)

手元に本はたくさんあるのに、図書館で検索したら書庫にあったので借りてしまいました。

仲間とともに贋金つかい(この本は贋金つかいともいう)に関わって最後は仲間たちの意地悪心からピストルで自ら命を絶った少年を題材に小説を描こうとする男が主人公のジッドの小説、というなんだかよくわかりにくいストーリーですが、作者が純粋な小説以外の要素を排し生涯の作品中唯一「小説」(ロマン)と分類したなかなか入魂の作品です。もっとも、主人公エドワールの日記を介した小説論を一つの大きな軸として物語が進み、なんだかこれを何をもってして純粋小説としたのか、という事にジッドの深い経験則が詰まっていそうです。あとがきにも書いてあるようで書いてなく、僕がただひとつ分かった事はジッドの代表作「狭き門」にあったようなフランス文学特有のというべきか耽美的で官能的で論理的に進む描写、というものがほとんど省略されており、そのほとんどはキリスト教を描くシーンの哲学的な登場人物のやりとりに原形を残すのみだということです。ジッドは他の自作を「レシ」(物語)だとか、「ソテイ」(中世の茶番劇の一種)と呼んでいますから、「狭き門」の内容と僕のつたない記憶力で照らし合わせてみますと、悲劇の中に生まれる官能、小説としての筋を介さないというか「明かり」になるものをジッドはこの作品で主人公エドワールの日記という形などを取ることによって吹き消しているのではないかな、と思いました。僕のこの仮定が万万が一正しい所を含んでいるのなら、ジッドが自分の作品をレシだとか茶番劇のようなものだと言ったのは、もっと身近な作家としての照れや誇りがあったのかも知れませんね。今日は眠いのでこのへんで。

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