肺ガンの母[おばあちゃん] 第８話

私が転職して１ヶ月経った、８月20日
母に異変が起きた。

夜、出かける用があって、
仕事から帰る。
夕食を簡単に済ませる。
で、慌ただしく、私は出かけてしまった。

何だか、
鎖につながれた飼い犬が、寂しそうに飼い主を見送るような、
そんなふうに、母を感じた。

後ろ髪を引かれる思い。
だった。

嫌な予感がして、
私は、用が済むと、急いで帰った。

私…お母さん、ただいま。

母…おかえり。ゴホンゴホン。

私…お母さん、大丈夫？

ごみ箱を見ると、血痰のついたティッシュペーパーが山の様になっていた。

母…大丈夫よ～。

お母さん、大丈夫じゃないから。

息子が二階から降りて来て、

息子…お母さん、おばあちゃんね、夕飯の時、元気がなくて、
あんまり食べなかったんだよ。
それに、ゴホゴホ、ずっと咳してる。

用意しておいた昼食も、食べていない。

そう言えば、
朝も食べたくない。
と言っていて、
食欲ない時の私の奥の手、
特製？「豆腐ぐちゃかけごはん」で、やっと、少し食べてた。
これは、豆腐に鰹節、醤油をかけて、ぐちゃぐちゃにまぜたのをごはんにかけて食べる。

なんか、まずそうだけど、意外に旨い。
夏、暑くて食欲なくても、食べれてしまう。
母も、大好きになっていた。
で、朝食は、少し食べれていたけど…。

男ってダメですよね。
っていうか、うちの旦那がダメなんですよね。

母親の様子がおかしいというのに、
私がPm10:30少し前に帰って来た時には、
もう、旦那はいびきをかいて寝ていた。

私は、東京の病院に電話をすると、
運よく、母の主治医の先生が当直でいた。

入院の支度を急いでして、母を車に乗せ、連れて行った。

先生の診察があって、検査して、
やっぱり、入院となってしまった。

私が、家に帰って来たのは明け方。
仕事に行かなければならなかったので、
旦那の妹に連絡して、病院に行ってもらった。

お母さん、
血痰を止める薬をもらって、帰って来れればいいなぁ～って思っていたんだよね。
２日前に、介護予防教室行ったし、
昨日は、散歩もしたのに…。
お母さんを病院において、一人で家に帰って来たくはなかったよ。
一緒に、帰って来たかったよ。
お母さん。
つづく