肺ガンの母[おばあちゃん] 第14話

母が、私を困らせた。

母…パセリちゃん、早く、窓の所に連れてって!

私…えぇ???

そこに、看護師さんが入って来て、

看護師…あら、窓開けちゃダメですよ。
閉めますよ。

なんか、助かった。

私…お母さん、怒られちゃったよ。
窓開けちゃダメですよ。
閉めますよ。

看護師さんの言い方を真似てみた。

母は、クスッと笑った。

母…パセリちゃん。

私…お母さん、なぁに。

私は、両手で、母の手を握った。

母…楽しかったぁ。ありがとう。

言いながら、母は目を閉じた。

私…お母さん、ダメよ。明日、○○さん(母の実娘)来るのよ。今すぐに呼ぶから…。
お母さん、ダメよ。お願い!逝かないで!!

母…もういいの。間に合わない。ありがとう!

握っていた母の手は、冷たく、硬くなっていった。

ナースコールをした。

私…母の様子がおかしいんです。急いで来て下さい。お願いします。

看護師さんは、しばらくしてから来た。
その間、私は、必死に、母に呼びかけていた。

すると、母の手は、すうっと、また暖かく、柔らかくなった。

看護師…どうしました。
計器には、異常は見られませんでしたよ。

え…???

私…今日は、全然寝てないんです。
オプソも、飲んだのですが…。

看護師…点滴を変えますね。

母は、ぼーっと天井を見ている。
私は、母の手を、ずっと握っていた。
時々、母は、軽く握り返して来た。

義妹が来た。
ワープして来たかのように早かった。
これも、神が手助けしてくれたのかも…。

義妹…お母さん!

母…○○ちゃん、お家に連れてって!
お家に帰りたい。

義妹…お母さん、そうだね。帰ろうね。

母…じゃ、すぐに連れてって。

義妹…え? お母さん、無理だよ。

この後がスゴイ。

お母さんは母親になった。
母…。
帰ろう。と言ったくせに、連れて帰ってくれないの。
帰れないのに、帰ろうなんて、嘘ついたの。
お父さんも、お母さんも、嘘が一番嫌いなの知ってるでしょう。
なんで、あなたは、そういう嘘を平気で言うの。
帰ろうって言ったんだから、早く連れて帰りなさい。

義妹…そんな事言ったって、お母さん、歩けないでしょう。

母…おぶって行きなさいよ。

そんなやり取りが30分も続いた。
さっき、あの世に逝きかけた人とは思えない迫力だった。

ただ、その間、血痰が、今までこんなにひどい事なかった。というほど、沢山出た。
すごい勢いで出まくる血痰を飛ばしながら、
母は、娘にお説教をしていた。
私は、本来の母をみたような気がした。

私は、血痰を、しきりに、ティッシュで拭いてあげていた。
あっという間に、ティッシュの山が出来た。

いたたまれなくなって、義妹が席をはずした。

私…お母さん、あのね。
お母さんは、まだ、お家に帰る事は出来ないのよ。
もう、夜だから、寝ましょう。

母…帰れないの?

私…うん、お母さん、夜だからね、寝ましょう!


お母さんは、スゴイ人だよ。
どこに、こんな力が残っていたの。
神様が、お母さんに下さった、最後の一日。
なんか、凄すぎだよ。
お母さん。

コメント

ハーフさん、
お母さんは、病院のベッドで死にたくはなかったのでしょうね。
最後の最後まで、お家に帰りたいと言っていたお母さん。
なんか、せつないです。

パセリ 2011年09月04日

akiさん、
ろうそくの炎は最後に勢いよく燃える。
まさに、そんな感じですね。
それにしても、お母さん、スゴイ人です。

パセリ 2011年09月03日

ああ~、ビックリした涙あせあせ(飛び散る汗)

最初に目を閉じた時で終わりかと思った~涙あせあせ(飛び散る汗)


結末はわかってるけど、まだイヤだよ涙

お母さん、元気な時を思い出したのかな。

叱りたかったのかな。

元気なとこを見せれば帰れるって思ったのかな涙

お母さん、スゴいよ涙[人差し指]

壮絶な一日でしたね。

お母様、とっても頑張ったのですね(;_;)

ろうそくの炎は最後に勢いよく燃えるのと同じで、
お母様の命の炎が燃えたのでしょうね(ToT)

目が赤くなってしまいました(*_*)

涙にむせんで、ファイトです!!!

2011年09月03日

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