ボロボロの自転車。

小学校の低学年の時に、自転車で階段降りるのが超流行った。


マウンテンバイクみたいなシャレたものなんてまだ持ってる子いなかったから、もう普通の自転車でやってた。

家の近くに大きな団地があって、階段がたくさんあった。


その中でまだ誰も降りたことがない、超長くて超急で、おまけにせまくて、真ん中に手摺がある危険な香り満載の階段があった。


みんなビビってやらなかったから俺が一番乗りしようと思ってチャレンジした。




そしたら緊張してるのとカッコつけたいのとで超力んでたから


一段目に降りた瞬間に勢いありすぎて前のめりになって、超ビビってブレーキかけたら


ハンドルが直角に曲がって、そのまま自転車の前に落ちつつ、自転車ごと転がり落ちて階段の途中で止まった。




どこが痛い？って聞かれたとしたら



もう神経通ってるとこ全部。



でも特に痛かったのはコメカミとお腹。



コメカミは多分階段の角でぶつけて血が出てるし、お腹はハンドルが食い込んで息できないし。



もう家帰って超怒られた。




でも全然へっちゃらで、次の日学校から帰ってまた同じ階段チャレンジした。



一回できるようになったら超楽勝～、俺が一番乗り～。




俺の自転車、買ってすぐ坂道ノーブレーキチャレンジで塀に当たってカゴが幾何学になって取っちゃったし


滑り台を自転車で降りれるかチャレンジしようと思ったら、上に着く前に途中で自転車ごと落ちて


ライトがうなだれて真下しか照らさないし、なんか前から見ると超悩み抱えた自転車な感じだし


いろんなとこ曲がってて手を離したら真っ直ぐ走らないし




でも、自転車の傷が一つ増える度に


ほんの少しだけ学習して

ほんの少しだけ賢くなって



そして『こんなのへっちゃらだし』が増えていく。




でも大人になっちゃうと


変に学習しすぎて

変に賢くなっちゃって

『こんなのへっちゃらだし』じゃなくて

『これはやめとこ』が増えていっちゃうかも。




そんなのは嫌だから、俺はあの頃のままでいよ～。



カバンの中には、チマチマとメモを取るための分厚い手帳なんかじゃなくて


赤チンと絆創膏を山盛り詰め込んで生きよ～。


無傷でピカピカの自転車なんて超カッコ悪いよ。






ボロボロで傷だらけの自転車は、無敵でへっちゃらな少年の証。