つっとんがったとは。
尖ったと言う意味だ。
標準語圏内だけれど、多少地域的な言葉。
方言と言えるかもしれない。
昨夜立ち上がる時に、左手を畳について力を入れた所で、手がグキッとした。
弾みで、顔がテーブルにゴツッと落ちた。
痛い
鼻の下というか唇の上が腫れて来た。
暫くして妹が私の顔を見て、ニヤニヤした。
突然蘇った記憶。
絶対に、父親みたいにはなりたくない。
それはかなり前の事、父親が釣りに出掛けた。
帰って来た父親を見るなり、弟が飛んで来た。
「口がつっとんがってる…。」と言って笑い転げた。
笑うなんて、失礼じゃんと弟をたしなめた私も、父親の顔を見るや「プッ」とやってしまった。
川で転び、しこたま顔を打ったらしい。
父親は何食わぬ顔を決め込む。
が、鼻から下があひるの口か河童のごとく、三角形に前に飛び出していた。
痛そうで本当に気の毒な状態なのは、わかっている。
しかし、父親の顔を見た者は一様に、驚いた後あさっての方をみたり、顔を伏せた。
肩が震えている。
気の毒そうな顔をするも、笑いをかみ殺しているのは明らかだった。
しばらく父親を正視する人はいなかった。
余りにも気の毒過ぎる。
本人は痛くて、食事も満足にできないのに…。
周りに笑いを提供するだけとは。
未だに語り草だが、本人はその話に一切触れない。
彼の心はかなり傷ついたようだ。
私の腫れは、そこまではいってなさそうだ。
笑ったバチが今頃やって来たのか。
父親の気持ちがチョッピリ分かった気がした。
明日は、マスクをして出勤することにした。
明日は我が身と言うことだ。
気をつけよう
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