今彼は疾走している。薄暗い田んぼの中を
H中学校からK市に帰る途中だ。国道をとおるより
能動のほうが車が少なくて気持ちがいい。
だが気をつけないと転落する危険もある。
今日はサッカー部の練習を見に行った。
100人ぐらいの生徒たちがだらだらとボールを蹴っていた。
青田が見ているとリーダーらしい子が寄ってきた。
「先生、サッカーやるうんけ」
「まあちょっとね」
ほんとにちょっとなのだがそれでも中学時代はキャプテンだった。
そのまま革靴にワイシャツでボールを蹴った。
「けっこうやるじゃん。」
生徒の目が輝いてきたのがわかる。
「あの死んじゃったN先生は出てこんかったに」
N先生とは青田の前任者で急死したために青田が採用された。
今までの勤めを教員採用試験が受かったので一度退職届をだしたが
採用通知がないまま机に居座っていたのだ。
他人の不幸でいきなり千葉の田舎まで来た。
結局ワイシャツもズボンもほこりまみれになった。
汗だらけの体がバイクで風を着ると気持ちがよかった。
なかなか面白そうだ。
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