タマゴン。

昔『かいけつ・タマゴン』とかいうアニメがあった。

眠たそうな顔した怪獣で卵を食べると怪獣を生む。

で、毎回この生んだ怪獣で事件を解決する、みたいな。


で、小学生の時、図工の時間に紙粘土をやって余った粘土で休み時間に、このタマゴンを思い出して怪獣を作った。

口とシッポの付け根に穴を開けて貫通させて、口から丸めた粘土を入れるとシッポの方から出てくる。

俺的にタマゴン。

そしたら友達にもウケて『やらせて、やらせて』って。

で、まだ紙粘土がビミョ～に乾いてないのに、友達が３つぐらいイッペンに口から卵を入れたら、中で詰まって出て来なくなった。

指じゃ取れないから、図工の時間に使った割り箸を口から入れてツツいて取ろうとしたけど、中でくっついて、なかなか取れなくて

そしたら、チャイムが鳴った。

仕方なく口に割り箸を入れたまま窓際に置いた。

で、担任の女の先生が入ってきた。

この先生、まだ新米で、俺達がイタズラするとすぐに泣いて、他の先生に言いつけに行く。

おまけに、半透明のチョーク箱にいつも新品のチョークを並べて入れてて、使って短くなるとまたすぐに新品を補充する、みたいなムダに几帳面な先生だった。

で、教室に入ってきてタマゴンを見つけた。

と思ったら、急に怒りだした。

『これを作ったの誰っ！』

仕方なく俺が手を上げた。

『なんでこんな残酷なことをするのっ！』って。

なんか、先生的にタマゴンを見て、トカゲの口に棒を突っ込んでトカゲの串刺しを作ったって勘違いしたらしい。

で、生き物は一生懸命生きてるだの、命の大切さ的な話だのを涙ながらに永遠語った後で

『ハーフ君っ！どういう気持ちでこれを作ったのっ！』って聞くから

『それタマゴン、卵がつっかえたから割り箸で取ってただけ』って。

そしたら、しばらく黙った後に

『なんでここに紙粘土があるのっ！後で図工室に返して来なさいっ！』

勘違いしたくせに話すり替えんな、とか思ったけど『はい…』ってしか言えなかった。

で、授業が終わって先生が職員室に戻ったスキに、置いていったチョーク箱を思いっきりバンッ！って踏んで中の新品のチョークを全部ヘシ折った。

上履きの足跡はちゃんと拭いて消した。

そして、子供レベルの幼稚な知識で、意味もなく指紋も拭き取って戻した。

これが精一杯の仕返し。



タマゴンなのに、俺、かわいいそう。