越えられない河に架かる橋








舞台『銀河英雄伝説外伝 オーベルシュタイン篇』
を観た







パウル・フォン・オーベルシュタインは
冷徹な策士



戦略上必要ならば



誰であっても
幾人であっても



切り捨てる











そんな彼にも
幼少期というものがあって



喜びがあって
哀しみがあって



家族がいて
生きる「場」があって



彼を構成するすべてに
理由があった











すべてを分かち合えたはずの
異母兄シュテファンと



道を違えたからこそ
生き永らえたのか



違えなければ
共に勝ち得た未来があったのか



真相は
深遠なる宇宙の闇のなか
オーディンの胸のうち










わかるのは
パウルが兄とともに
切り捨てたのは



弱さでなく
愛でなく



一人の人間としての
幸福だ







優しさゆえの怒りと
愛が深いゆえの憎しみと
強く望むがゆえの冷酷さと



それだけを
生きる糧にして



まるで誰かに
償うように



最初からなにも
望んでなどなかったように











最後のカーテンコール



キャストが袖にはけていくなか
シュテファン役の岸さんが



一人舞台上に残る
弟パウル役の貴水さんに



一人振り返って
ガッツポーズをしてみせた



親指立てて
後はよろしく、とばかりに








その様が
劇中の兄弟と重なり



泣けて泣けて
仕方なかった












乗り越えられない
人と人の間に流る河



深く昏いその河に
架けられる橋はただひとつ



それはきっと
二人の間にも架かっていた



架かっていた
はずなのだ



それでも越えられない
深い河



「深い」と感じられる
それこそが



橋が架かっていた
証なのに

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