バルゾー・ジムノ　とても熱い

ナゼ・・・。
なぜここにいるのか。

ソレハ・・・。
話しても分からない気がする。
アメリカやフランスの豊かさに惹かれている
彼らに日本の学生である自分がなぜ
こんな国（彼らによれば）に来るのかを語っても。

彼は、立ち止っていた。
渋谷のスクランブル交差点で波のように押し寄せる
人の群れ。
その度の波にも乗りきれず立ち止っているのが自分だと思う。

アーニャは素朴な目で彼を見ていた。
この娘は農民出身だという健康さを持ち合わせているようだったが
ユタカがウォトカをひどく飲むのを嫌っていた。
まるでポーランド人みたいに

明日はマイダネックへ行くというと
彼女は郊外へのバス路線を教えてくれた。
ナゼ、アンナサムイトコロヘ
ソレハ、と答えかけてまた話を止めた。

帰り道でかれが歩道と車道の間で滑りそうになるところを
アーニャは器用にブーツで滑って見せた。