壁~S・カルマ氏の犯罪~(安部公房)

この本をなぜ読みたいと思って買ったのか、忘れてしまいましたが、とにかく内容の紹介を見て読みたいと思ったからです。思い出した。たぶん川端康成のWikipediaからだ。この作品は芥川賞を川端康成らの強い推薦により受賞。安部公房の作品は海外からの評価も高く晩年はノーベル文学賞の有力候補にもなったほどで、三島由紀夫が西欧圏で多く読まれ愛されたのとは対照的に、安部公房は東欧圏で愛されたそうでよく比較されます。

以下、あらすじは自分でまとめる能力がなくうまく説明できないのでWikipediaより。
ある朝、目を覚ますとぼくは自分の名前を失ってしまったことに気づいた。身分証明書を見てみても名前の部分だけ消えていた。事務所の名札には、「S・カルマ」と書かれているが、しっくりとこない。驚いたことには、ぼくの席に、「S・カルマ」と書かれた名刺がすでに座っていた。名刺はぼくの元から逃げ出し、空虚感を覚えたぼくは病院へ行った。だが、院内の写真雑誌の砂丘の風景を胸の中に吸い取ってしまったことがわかり、帰されてしまう。ぼくは動物園に向かったが、ラクダを吸い取りかけたところを、グリーンの背広の男たちに捕らえられ窃盗の罪で裁判にかけられることになった。法廷には今日会った人々が証人として集まっていた。
その場を同僚のタイピスト・Y子と逃げたぼくは、翌日に動物園でまた彼女と会う約束をしてアパートに帰った。翌朝、パパが訪ねてきた。その後、ぼくは靴やネクタイに反抗され時間に遅れて動物園についた。Y子はぼくの名刺と語らっていた。よく見るとY子はマネキン人形だった。ぼくは、街のショーウインドーに残されている男の人形から、「世界の果に関する講演と映画」の切符をもらった。ぼくはスクリーンに映っているぼくの部屋を見た。やがてぼくは、グリーンの背広の男たちにスクリーンの中へ突き飛ばされ画面の中に入った。画面の中のぼく(彼)が壁を見続けていると、あたりが暗くなり砂丘に「彼」はいた。そして地面から壁が生えてきて、そのドアを開けると酒場だった。そこにはタイピストとマネキン半々のY子がいた。
別のドアから「成長する壁調査団」となったドクトル(病院の医者)とパパの姿をしたユルバン教授が現われ、「彼」を解剖しようとするが、Y子の機転で「彼」は難を逃れた。ユルバン教授はラクダを動物園から呼びよせ、それに乗り、縮小して「彼」の中を探索するが蒼ざめて戻ってきた。(続く)

コメント

僕が1000冊本を読んだら、小さな喫茶店兼図書館をやって本を置こうと思ってますわーい(嬉しい顔) 本も一回、あるいはそれ以上読まれて幸せなのかな、って思いました。その時はぽえむさんに勧められた本も置きたいですほっとした顔 なので、たくさんの本や感想を教えてくださいね。僕もぽえむさんに僕なりに一冊でもたくさんの本を勧められるようにますます読む気になりました。

「第四氷河期」ではなく「第四間氷期」なのですね。安部公房が晩年小説家として認めていた数少ない内の一人だという、大江健三郎さんも読んでみたいです。たしかご存命で反戦・反核活動をなさってますよね。大江健三郎さんは写真などのイメージではからっとした方のように見えて、単純なイメージでは安部公房と逆だったら面白いな、と思ってますわーい(嬉しい顔)

Hippy 2013年10月07日

そうでした。

石川淳さんの文章でした。

言われて、思い出しました。


本箱を探してみましたが、安部公房の本は「密会」しか見つかりませんでした。
5~6冊あったはずなのですが・・・何度かの引っ越しで、
開けてない段ボールの底になっているのかもしれません。

是非、機会があったら「第四間氷期」、読んでみてください。

本箱から見つかった「密会」は、買ったけれども、なかなか読み進められず、
いつしか忘れていた本でした。

本箱の片隅で、ひっそりと待っていてくれたんですね。
これを機に、読んでみようと思います。

ぽえむ 2013年10月07日

あと、ドストエフスキーの話は石川淳さんの序文にあった気がします。今手元にないので…ごめんなさい

Hippy 2013年10月07日

ぽえむさん、こんばんは。
真摯に読むと、真摯に答えてくれる。まさにそんな感じがしました。

砂の女は思春期に読んで、ぴんとこなかった記憶があります。違う作品だったかな?今読んだら違うだろうなあ、と思って再読したいと思っている次第です。どっかにあればいいけど。

「第四氷河期」、読んでみますね。ありがとうございます。

Hippy 2013年10月07日

そう言えば、ドストエフスキーは、壁に突き当たると、
壁に沿って、何処までも何処までも。歩き続ける。

安部公房は、壁にぶつかると、壁になってしまう。

作品を評して、文芸評論家(だったかな?)が言った言葉ですが、
確かに、上手く捉えてると思います。

安部公房の作品は、「砂の女」や「他人の顔」が有名だと思いますが、
彼の「第四間氷期」という作品は、ほんと面白くて、読みやすく、
SFのようであり、ミステリーのようであり、
実は人間存在に関わる、深い内容なので、もし未読ならお勧めです。

確かに、悪夢を見てるようで、苦しくなることもありますが、
真摯に読むと、真摯に応えてくれる、そんな作家だと思います。

ぽえむ 2013年10月07日

ドクトルとユルバン教授は調査を中止し逃げていった。ただ一人残された「彼」は壁そのものに変形していく。

以上です。
最初は典型的な頭の良い人の文章で、そういう意味では上記のように比較されたという三島由紀夫の文章と似たことを感じましたが、ある程度読んで気づけば小説の中に深くとらわれている。石川淳氏の序文に壁という物の役割についての石川氏の考察、壁は時に変革を生んだりするなどといったことが書かれています。

主人公は、風景などを吸い込みたかったのかも知れないな、脳内の世界を表現もしているのかな、と思いましたが、この小説に安部公房は無限の意味を与えていて、人によってはまったく何も感じない小説かも知れないが、時間をかけて読むととても深い意味や仕掛けや哲学的な風刺が見られ、これが芥川賞を受賞してたくさんの人に読まれるのは良かったな、良い事だなと思いました。

皆の評価やあらすじというのをたとえば読む前に見るのも悪いものではないな、と思いました。名も無き作家の新作ならこの作品のレトリック(と思わせられる)事がどれだけ分かるだろうか、その本をどれだけ読みたいと思うのかな、と。
最近自分に値打ちはあるのか、値打ちのある人間になるのは難しいな、と考えていましたが誰にでも値打ちはあるんだ、人は皆見えない壁の中で生きている。意味のある事とは人に対しての事ではないのか。自分の世界の壁の中で考えるから自分の意義が分からなくなるんだ、と思いました。
僕も実際何も普段考えていません。立ち止まって人はあらゆる、無限の事を考えてみるのですがやる事は変わりなく、5秒経てば同じ事をやる。考えなくてもひとつの意志を持って統一された大きなあらゆる事をやっています。それはまるで「壁」に動かされるかのように。

Hippy 2013年10月06日

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