期待されない現実。

私には、一つ上の兄が居た。所謂、“年子”だった。彼は、私とは性格、人格

が全く正反対で、父の言う事を素直に聴き、また、勉強もよく出来た人間（ひと）

だった。私には、妹も居るが、両親、兄、妹の血液型はＡ型で、私一人だけが、

Ｏ型なのだ。私は、決して“血液型信奉者”ではないが、幼少の頃から父に、

かなり手厳しく“叱られ”、兄と“比較されて”育った。「何故、○○（兄）に出来て

、お前には出来ないのだ！」と、言った具合に・・・。そして、いつも父の膝に座る

のは兄で、私は父に、抱っこされた記憶さえも、全くない。しかし、そんな兄と

私は、想いの他、仲が良かった。兄は“ヤンチャ坊主”の私を「しょうがない

なぁ（笑）」と、何かと気に掛けてくれ、問題を起こす度に父は頭ごなしに怒る

だけだったが、兄は理詰めでたしなめてくれた。不思議と「なるほどなぁ・・・」

と、私は納得出来た。ある意味、兄が世間で言う“父親”の様な存在だった

のかも知れない。私に取って実の父は、“天敵”以外の、何者でもなかった。

だが、私が高校３年生の夏休みの或る日に、兄は交通事故に巻き込まれ、

急逝してしまった。父の言う通りに、上の医学部に進み、学んでいたのだが

・・・父の落胆振りは、それはもう、筆舌に尽くし難かった。どんな時でも、

毅然としている父だが、喪主挨拶の時に、一瞬声を詰まらせた・・・そんな父の

姿を、私は、後にも先にも、見た事がない。その出来事から“時間（とき）”が、

かなり経ち・・・父も歳を取ったが、今では何事も無かったの様に、元気に

過ごして居る。ただ、未だに我が家では“兄”の話はタブーなのだ。

私はこの歳になっても、父から褒められる事は一切無いし、認められても

いない。どれだけ、実績を上げようとも・・・だ。父が、私を“息子”だ、と思って

いないのは、理解して居る。私は捻くれている訳ではなく、彼の心情はよく

理解は出来る。『だけども、お父さん・・・私は貴方が大好きですよ！！』

片想いだが（笑）。