馬。

小学校の低学年の時に、動物園に遠足に行った。


動物園の中に『ふれあい牧場』みたいなのがあって、飼育員さんと一緒に馬に触ったり、草をあげたりできた。


クラスのみんなで一頭の馬を囲んで、触らせてくれた。


けど、並んでる順番でそのまま囲んだから、俺、馬の左の後ろ足のところになっちゃった。



でも、馬なんてこんな近くで触ったりとか滅多にできないし、喜んで太ももとか撫でてた。



そしたら、みんなで一斉に触ったから、馬が俺のいる側に一歩横に移動した。





その瞬間に俺の右足にギュ～～ッ、って激痛～～。




馬、俺の足、踏んでるし～～




そしたら飼育員さんが

『あ、この子はおとなし～い子だけど、真後ろで急に大きな声を出すと、ビックリして蹴られちゃったりするから気をつけて下さいね～』

って。




うん、確かにおとなしい。


蹴られてもいない。



でも、すでに静か～に俺の足、踏んでますけど～



超いてぇ～～、しかも抜けないし～



みんなは、撫でたり、草をあげたりして超楽しそ～。


でも、俺、それどころじゃない。


で、俺、飼育員さんに注意されたばっかしだし、自分でなんとかしないとって。


なんか、はいっ、て手をあげて


『先生っ、ボク今、馬に足踏まれてます』


っていうのもカッコ悪いし。



撫でてるフリをしながら一生懸命、押したけど、動くわけないし、こんなデカいの。



でも、早くしないと次の場所に移動する時に足踏まれてるのバレちゃう。



で、一瞬だけ痛いのガマンして、思いっきり足を引っ張った。



そしたら、靴が脱げて足だけ抜けた。



で、挟まってた靴を引っこ抜いて、慌てて履いた。



そしたら、横にいた友達が

『ハーフ君、今、馬に足踏まれてたの？』


って。

『踏まれてないよ』

『え、でも靴が…』

『踏まれてな・いっ！』


って、もう、それ以上言うなっ、みんなにも言うなっ、て感じ。


なんか、みんなに笑われると思ったから。




ハーフプライドだね。







今でも、このことを思い出すと、あの斜め後ろから見た馬の顔が浮かぶ。


もらった草を口の横からピヨンピヨン出して、ムニャムニャしながら、たまにチラッてこっち見て、またムニャムニャムニャ……











お前…わざと踏んだだろ。