ネクタイ。

昔、友達のお祖父ちゃんのお葬式に出た。


確か95歳で、病気とかじゃなくて老衰って聞いた。


結構広い会場での式で、早めに行って友達と家族の人達に挨拶して、待ち合い室で待った。



そろそろ時間かなって思って、トイレに行って、鏡の前でネクタイを直してたら



『ハーフ君っ、久しぶりっ』


って、顔見知りのオジサンだった。


確か肉体労働系の人で、小柄で小太りだけど、ガッチリしてて、色黒で髪はパンチパーマが伸びた感じで、せかせかよく動く人だった。


『あ、こんにちは』



で、俺が自分のネクタイ直してたら



『俺、普段ネクタイなんてしないからなっ。やり方がわからないなっ。ハーフ君っ、これおかしくないかなっ、なんか、短くないかなっ』


って言うから、パッて見たら




マ～ジ、どう結んだのか知らないけど、ネクタイ、Ｙシャツの第２ボタンぐらいまでしかなくて


しかも、それを超真剣な顔で見せるんだよね。




もーーーーうっ！！



これから絶対に笑ったりとかしちゃいけない場所に出るのに、やめてくれ！！とか思って。



で、仕方ないから俺が結び直してあげて。



もう、この事は考えないようにしよ、他のこと考えよ、って。



でも、万一のことを考えて、会場の端の方に座った。




そしたら『ヨイショ』とか言って、オジサンが普通に俺の横に座った。



だからなんでだよっ！席、いっぱい空いてんじゃんかっ！



短いネクタイ、思い出すじゃんかっ！



で、このオジサン、式が始まってからもキョロキョロしたり、なんか、落ち着かないんだよね。




そしたら、ヒソヒソ声で


『ハーフ君、ちょっとあの人見て』


って言うから、チラッて。




『あの人のネクタイ、スゴい太くないか』


って、ついネクタイ見たら




マジ太いしっ。


太すぎだしっ。




これだけだったら、そんなに面白くないんだけど、もう、さっきの短かいネクタイと合わさっちゃって




俺……



吹き出しちゃったよ……



慌てて口と鼻、押さえて、ブホッ、って。


耳の中もピーーー、みたいな。



もう、オッサン黙れ！！とか思って。









これ……


俺、悪くないよね…

ネクタイ２連打だし。



帰りにお祖父ちゃんにゴメンなさいした