つい足を延ばしてしまった。
そのユースホステルを出てキオスコで
煙草を買うはずが明るい光のついている
広場のあたりの店をを見ていた。
裸電球の肉屋で硬いソーセージを並んで買い
小瓶のビールを手に入れた。
ベレー帽の男が域だったので
それをまねして帽子屋にも入った。
元の道を探して敷石野路道を歩き始めたころ
あたりはつとに暗くなり雪が牡丹雪になった。
人影がなくなり、彼は自分がどこを歩いているか見失った。
ひとつの角を曲がるとより人気(ひとけ)がなくなるようだった。
彼は焦った。冷や汗がすぐに凍りつくような寒さだった。
あわてて紙袋のソーセージをかじった。
意識が少し飛んでいた。
まるでマッチ売りの少女だなと思った。
そのとき白い建物が見えた。
雪でかすむ暗い闇の向こうに巨大な石造りの教会があった。
まさしくそこにずうっと立っていたように。
助かったと思った。
なぜユトリロの描いた絵をこれと
錯覚するのだろう。
後に何度も夢で見たこの風景は
ユトリロの絵と重なるのだった。
ようやく帰りついたユースの食堂には
もうだれもいなかった。
コメント
いいね・コメント投稿・クリップはログインが必要です。
ログインする
不適切なコメントを通報する