彼は、ルブリンから再び汽車に乗った。
これは国際列車でコンパートメント式(部屋式)列車である。
白い平原が続く退屈な窓の景色をけだるく見ている彼は
少し旅に倦いていた。
「アロ」
向かいのシートの大柄な男たちが話しかけてきた。
二人はカタコトの英語でソニーのラジオや電気製品の名前を連ねた。
親子で出稼ぎに行くらしい。
スラブ系の小ざっぱりとした顔をしている。
列車が止まり26,7の女が乗り込んできた。
やや顔の長い大きな体で黒いパンタロンをはいている。
二人組の父親は、4,5分その女と話していたが
もちろん現地語だった。
男が話すポーランド語はなぜかフニャフニャと聞こえる。
ドイツ人から「情けないやつら」
といわれそうな響きだ。総じてポーランド人は個人主義者で
ヒーローは出るが戦争には負けてばかりであるらしい。
するとその父子はこちらを向いてニヤニヤと話しかけてきた。
「コノオンナハドウダ。」
「イイカラダヲシテルダロウ」
そんなことを言い出した。
なんという親子だろう、彼はびっくりした。
ところが、猥談の対象にされた女は
怒るでもなく尻やモモを触らせている。
彼はさらにびっくりした。
まるでカラマーゾフ家の人々・・・と。
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