わが青春のフローレンス
戦後が戦後でなくなった時期
それが確かにあった。
日本だけでなく世界中にあった。
労働運動がメロドラマ化した映画(これ)
フォークソングにバラが咲いた時期
抵抗者が返ってきたヨッパライになったとき
長髪が結婚の合図になるというのだった。
ニッポンの戦前は日の丸の赤で
やがて終わらぬ戦争が茶色となり
敗戦によって灰色となったものが
復興の萌黄色となったものが
やがてすべてが朧となり
サイケデリックにかき消されてしまった。
フィレンツェのカテドラルや
ベッキオ橋の古びた色彩を見ると
自分がいた渋谷の駅前交差点の群衆や
新宿駅構内の雑踏は一体何かとおもってしまう。
ベッキオ橋で数時間座っていても
誰にもとがめられなかった。
濁り色の水もゆったり流れていた。
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