朝から絶好調の母だったが、
PM3時
先生が回診に来ると、
母…先生!もう、いい。
私…お母さん、何言っているの!?
今日は調子いいし、元気になって帰るのよ。
母は、先生を見て、ニコニコしているだけだった。
先生が病室を出る時、
母…先生!ありがとうございました。
丁寧に丁寧に頭を下げて、ご挨拶をしていた。
それは、つい昨日までの、か細い声、モウロウとしていた母とは別人の様だった。
先生は、何もする事なく、何も言わず、
私に、にこっと会釈をして出て行った。
それは、
「わかっていますよね」
と、言っているかのようだった。
この間、先生からの説明の時、
腫瘍指数は 12000にもなっていて、
これは、考えられない数値であり
完璧に振り切っています。
と言われていた。
健康な人は37位。
それからすると、確かに 12000という数字はスゴイ。
それでも、私は、
「母は奇跡を起こす人」と、まだ信じてた。
私が、先生を追って、病室を出ようとしたら、
母…パセリちゃん、あのね…。
母の昔話しや、親戚関係の事についての話。
頭に浮かぶ、あらゆるすべての事を、私に話したいらしく、
ゆっくりゆっくり、話は続けられた。
研修生の子は、お昼過ぎにも来てくれて、一緒に、母の話に付き合ってくれた。
母…忙しいのに、ごめんなさいね。
研修生…仕事、急いでやって来たのですよ。
後は、○○さん(母)のお世話をするのが、私の仕事なんですよ。
と、優しく、母の手を握ってくれた。
とても、優しい子で、側にいてくれて、母は楽しそうだった。
私も楽しかった。
その研修生も、4時に帰り、
PM5時
母…パセリちゃん、窓、開けてくれる。
私…外の空気、吸いたくなったの?
と、窓を開けた。
母…お母さんを、窓の側に連れて行ってくれる?
お迎えが来るの。
母は、外の上の方を眺めていた。
お迎えって…。
かぐや姫じゃないんだからさぁ。
でもね、
お母さんには、本当に
お迎え来ているのが、見えているようでしたね。
お母さん
ハーフさん、
正直、母がお迎えが来るって言ったのには、
私、怖かったですよ。
え…。
何言ってるの?
本当に、お迎えって来るの?
誰が…?
って、そんな感じで、ゾクッとしました。
お迎え…。
本当にあるんですね。
きっと…。