君の町の雪は解けましたか?



「東京」と「雪」って、なんとなく不釣り合いな気がする。
だって、雪が降ると交通機関はかなりの確率で麻痺してしまうし、
テレビはやったぜぇ!とでも言いたげに雪で足をすべらせるサラリーマンの映像が流れる。
同僚は窓を好奇心の塊で凝視しながら、
「雪が降り出したぜぇ!」とはしゃいでいる。
「そんなに嬉しいか?」
と、皮肉を込めて言ってみると、こいつらしくもない無垢な表情を浮かべて、
「俺のふるさとじゃ雪は降らないからな。」
と、言った。
「そうか。」
俺はそう返すしかなかった。

実を言うと、俺が住んでたふるさともそんなに雪が降る地域というわけじゃない。
南部の瀬戸内側だから、ほとんど降ることは無い。
反対に北部は今時分、天気予報では「所により雪」と、天気予報士が告げていることだろう。

学生の頃は歌にある「犬は喜び庭駆け回る」のような感じで悪友と雪景色で変わった見慣れた景色を瞳に焼き付けながら、雪をかき集めて、悪友に投げつけあった。

俺と悪友は駅に着くと、雪を触りすぎて、冷え切った手の平をお互いの学生服に擦り付ける。
「やめろよ。」と無邪気に叫ぶ俺たちはふと、反対のホームに佇む女生徒に目をとめた。

今までの行為がなんとなく恥ずかしくて、俺たちは女生徒の真ん前からうつむきながら、横へ横へと移動して、もう大丈夫だろうと顔を上げた時、すでに反対ホームの下り電車は出発をして、
顔を見合わせてため息をついた。

数日後、悪友が風邪をひいて学校を休んだ日。
俺は部活をさぼって、下り電車に乗り込んで岡山方面へ向かった。
この駅から下っていくと、兵庫県から岡山県へと変わる。
県が変わっただけで、景色も変わった。
ある駅にはあたり一面雪景色となっていた。
それはその場で降り積もった感じではなく、
常に雪景色である。そんな重みのある雪景色に俺は電車のドアが開いたと同時にとっさにホームに降り立った。
電車が去って行くと、俺はどこか違う世界に迷い込んだ不安を感じた。
背後に気配を感じて、振り返るとそこにはいつも見かける女生徒が立っていた。
俺は驚いて、思わず後ずさった。
女生徒はニコリともせずに俺を通り過ぎて、改札へ向かった。
声をかけられなかったのは寒さだけじゃない。
俺と彼女との間には雪と云う壁ができている。
それは厚い壁のような気がした。
たった、15分の移動でここまで世界が変わることに俺はしばらくたちつくしそんな重みのある雪景色に俺は電車のドアが開いたと同時にとっさにホームに降り立った。
電車が去って行くと、俺はどこか違う世界に迷い込んだ不安を感じた。
背後に気配を感じて、振り返るとそこにはいつも見かける女生徒が立っていた。
俺は驚いて、思わず後ずさった。
女生徒はニコリともせずに俺を通り過ぎて、改札へ向かった。
声をかけられなかったのは寒さだけじゃない。
俺と彼女との間には雪と云う壁ができている。
それは厚い壁のような気がした。
たった、15分の移動でここまで世界が変わることに俺はしばらくたちつくし、
すぐにやってきた上り電車に飛び乗って自分の世界へ戻って行った。

あれから俺はなんとなく、彼女と接するのを避けているうちに高校を卒業して上京した。

たぶん、変わることのない備前の町に、
俺は雪が降る度、彼女の事を思い出す。

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